抱擁(2020)

Embrace

左H250×W450×D500(mm)/中央H300×W450×D600(mm)/右H200×W550×D400(mm)

手びねり 酸化焼成1250°C

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作品説明

2019年度 筑波大学芸術専門学群卒業制作展 芸術賞受賞

《抱擁》は抱接(ほうせつ)を行っているヒキガエルをモチーフに作られている。

 抱接とはオスのカエルがメスのカエルと重なり生殖孔を近づけることによって体外受精をするための行為である。 その様子は多くの場合、オスがメスをハグするように抱えているように見える。

またカエルの種類によっては一匹のメスに対して数匹〜数十匹のオスが競うように抱接を行おうとする場合があり、 何匹ものカエル(主にヒキガエル)が団子のようにまとわりつく様子は「ガマ合戦」と称されることがある。

 抱接をして隙間なく密着しているカエルたちは一見すると何匹重なっているのか、あるいはどこからどこまでが一匹のからだなのか境界が曖昧になり、まるでその塊が一つの個体のように見える。

しかしよく観察すればその塊にも個々のカエルたちが見えてくる。こうしたぱっと見の印象から想像される「曖昧な印象」と時間をかけて観察した際に見えてくるカエルの「具体的な印象」、二種類の見え方を一つの作品の造形表現に組み込むことを《抱擁》は目的としている。

胴体部分は抱接しているカエルたちの境界があやふやでどのように重なっているのかわからない「曖昧な印象」部分を表しているためカエルの色や質感はデフォルメされ具象的には表現されていない。

一方で脚や顔部分はカエルというモチーフの「らしさ」が最も現れる部分だと考えるためそこは質感や形状が実物のカエルと近い状態で表現されている。 (制作報告書より)